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  • 2022-01-19

【特集】dev4テスト流し込み

2021年は、中国政府によるゲームへの規制が一層強まった年だった。その一方で「メタバース」が一躍脚光を浴びるなど、新しい展開も見えてきている。今回は、そんな中国のモバイルゲーム業界の事情を振り返る。


特集概要

はじめに

2021年の中国モバイルゲーム業界は、打撃と新たな展開が共存していたと言える。

打撃とは、突然に政府の監督が強化されたことである。代表的なのは、未成年者のプレイ時間の制限と、ゲーム版号の発行停止だ。

新たな展開とは、監督が強化された中でも一年を通して商業的に成功し、プレイヤーからも高い評価を受けた作品が複数登場したことを指す。

また、下半期に突然脚光を浴びた「メタバース」がゲーム会社の新たな注力ポイントとなった。多くのモバイルゲームメーカーがこの波に乗り、自社の「メタバース」計画を発表した。

2021年が終わりを迎えるにあたり、今回の特集では、今年の中国モバイルゲーム市場に影響を与えた重要トピックや人気作品を振り返り、2021年をまとめる。



調査概要

今回の特集の概要は次のとおりである。




業界重大トピック振り返り

「ゲーム適正年齢表示制度」試験運用開始

2021年1月、国営メディア人民網が担当し、多数のゲームディベロッパーを招集して策定した「ゲーム適正年齢表示制度(遊戯適齢提示制度)」が国家新聞出版署に承認され、試験運用が開始された。

今回の「ゲーム適正年齢表示制度」は国内で初めて実施される。その形式や内容は、他の国々で実施されているゲームレーティング制度に似ている。今回の試験運用開始後、リリース・運営されるすべてのゲームは(プラットフォームやジャンルにかかわらず)、ログイン画面の目立つ位置や製品の外装に適正年齢の表示をしなければならない。



「ゲーム適正年齢表示制度」内容
中国の国情に合わせ、「8+」、「12+」、「16+」の3等級に分ける。



▲「ゲーム適正年齢表示制度」における3種類のレーティング表示。



ゲーム適正年齢表示を行う場所
①ゲーム公式サイト・ダウンロード画面
②ゲーム登録/ログイン画面
③ゲームのPV、広告画像などすべての広報物



▲ゲームの公式サイト、ログイン画面などの目立つ位置に、適正年齢を表示しなければならない。



「ゲーム適正年齢表示制度」の目的
l未成年者が自身に合ったゲームを選択できるようにすること。 l保護者が未成年者に合ったゲームを選択できるようにすること。 lゲーム企業の社会的責任感を高め、ゲーム業界の健全な発展を促すこと。


▲ゲームの公式サイトにはロゴのほか、テキストでも適正年齢の範囲を記述しなければならない。



ゲーム版号審査基準の調整

2021年3月、新闻出版署は「ゲーム審査評点細則(遊戯審査評分細則)」を配布した。ゲームの新たな評価・審査制度が2021年4月1日より試験運用を開始された。

新たな審査体系では、中宣部出版局がゲームの審査・評点作業を担う。2人以上の専門家がゲーム作品を審査する。「思想の方向性(観念導向)」、「新規性(原創設計)」、「品質(制作品质)」、「文化的素養(文化内涵)」、「開発進度(開発程度)」の5項目について評点を行い、これらを合計して総合得点を算出する。

5点が最高点、0点が最低点で、3点が合格点。0点の項目が1つでもあれば、その時点で審査は不合格となり、ディベロッパーに修正が求められる。





「ゲーム依存防止新規制」発表

2021年8月30日、国家新聞出版署が最新の通知を発表した。通知の内容は、未成年者のオンラインゲーム依存防止を適切に実行すること。この通知は、未成年プレイヤーのゲームプレイ時間を大幅に減らし、ゲーム時間を厳格に制限することを求めている。そのため、史上最も厳しいゲーム依存防止規制であると言われている。

今回の新たなゲーム依存防止規制は、中国のゲーム市場にさらなる制限を加えるものであり、中国で上場しているゲーム開発企業の株価はこれに呼応して下落した。しかし、業界は、この規制を過度には悲観していない。未成年プレイヤーは確かにゲームのユーザーアクティブ度に大きく貢献しているものの、収入面での貢献は限られることがその主な理由である。



ゲーム依存防止新規制内容

①ゲーム時間の制限
オンラインゲームサービスプロバイダーは未成年者に対して、毎週金曜・土曜・日曜の20:00~21:00にサービスを提供できる。法定休日においても同時間帯の1時間のみサービスを提供できる。平日が休日に当たる場合(春節期間など)は、その時期の状況に応じて調整する。

②ユーザーの実名登録・ログイン要求を厳格に実施
これまで実施されてきた身分証登録制は抜け道が容易に発生する。ゲームディベロッパーは実名登録を確実に行うため、動画認証などの方法を採用する。

③監督強化
新聞出版署は、最新の依存防止規制を遵守していないゲーム企業を厳しく監督する。要求に従わない場合は相応の処罰を行う。



▲国家新聞出版署が8月末に公開した最新の依存防止規制。史上最も厳格なゲーム規制と考えられている。



ゲーム出版版号発行停止

2021年になってからは新聞出版署が毎月最終週に最新の版号を発表することが慣例になっていた。この慣例は7月まで続いた。8月末にゲーム版号が発表される代わりに最新の依存防止規制が発表され、以来年末に至るまで新聞出版署はゲーム版号を発行していない。

版号の発行停止により、今年の下半期のモバイルゲーム市場はストックの勝負になった。上半期に版号を取得したゲームが相次いでオープンβ版を公開した。

業界内では版号発行再開のうわさが流れ続けているものの、12月末になっても再開はされていない。以下のグラフは、今年のゲーム版号の発行状況である(モバイルプラットフォームのみの統計)。





Nvsgamesがヘビーゲーム市場に参入

ByteDance(字節跳動)は、カジュアルユーザー向けとヘビーユーザー向けの2種類のゲームパブリッシングラインを設置しており、それぞれ異なる会社に属する。カジュアルユーザー向けのゲームはOhayooがパブリッシャーとなり、カジュアルゲームのパブリッシングに専念している。2021年4月、ByteDance(字節跳動)はグループ内部のリソースを統合し、ヘビーユーザー向けのゲームブランドNvsgames(朝夕光年)を立ち上げた。

この会社の設立は、ByteDance(字節跳動)がヘビ―ゲーム市場に正式参入することを意味する。これに合わせて、4月末に人気作品『航海王:熱血航線』をリリースした。

中国のモバイルゲーム市場がストック勝負の時代に入ると、ByteDance(字節跳動)はTencentGames(騰訊遊戯)の王者としての地位に挑戦状を叩きつけた。現在、他の有名ディベロッパー(Moonton(沐童科技)など)の買収、ゲーム人材の発掘などの方法により、競争力を高めている。



▲Nvsgames(朝夕光年)公式ウェブサイト:www.nvsgames.cn/ 



▲現在発行されている7作品のうち、『航海王:熱血航線』と、女性向け作品『花亦山心之月』はいずれも2021年に成功を収めた。



「メタバース」概念が登場 ゲームメーカーが続々参入

2021年9月より、「メタバース」という新たな概念が中国のモバイルゲーム業界において話題となった。国の監督部門がゲーム全体の規制を強化するに伴い、ゲームディベロッパーは新たな成長分野を探す必要に迫られた。

「メタバース」の概念の実現はまだ非現実的ではあるが、ゲームディベロッパーは「メタバース」業務への参入について優位性を持つ。中国のモバイルゲームメーカーは、バーチャルキャラクターの開発、オープンワールドの構築などにより、豊富な経験を蓄積しているためである。

非公式の統計によれば、中国のゲーム業界では、Tencent(騰訊)・Netease(網易)の二大巨頭のほか、ByteDance(字節跳動)、PerfectTime(完美世界)、miHoYo(米哈遊)、CMGE(中手遊)などの会社もメタバース関連の商標を申請している。



▲ Tencent(騰訊)のメタバース体制。



▲ ByteDance(字節跳動)は企業買収により、メタバースの概念を取り入れたゲームをリリースした。



大手メーカーが新作発表会を開催、将来の展望を発表

TencentGames(騰訊遊戯)、NeteaseGames(網易遊戯)、BilibiliGames(嗶哩嗶哩遊戯)、TapTapがそれぞれ年内に新作発表会を開催し、2022年の新作を発表した。

TencentGames(騰訊遊戯)とNeteaseGames(網易遊戯)の新作発表会は過去の特集でも紹介しているため、以前のレポートを参照されたい。BilibiliGames(嗶哩嗶哩遊戯)とTapTapの発表会はいずれも下半期に開催されたため、今回初めて紹介する。

BilibiliGames(嗶哩嗶哩遊戯)はサブカル系ユーザー向けのパブリッシャーであり、新作はいずれもサブカル的な属性を有するゲームであった。中でも注目されたのは、JRPG『イースVIII』の発表である。TapTapは有名なゲームフォーラムであり、膨大な数のディープユーザーを獲得している。今回TapTapがパブリッシングを行うことが発表された新作の中には、注目作『ドラゴンクエスト ダイの大冒険』も含まれる。



▲ 『イースVIII』がBilibiliGames(嗶哩嗶哩遊戯)の発表会で初めて発表された。



▲ 『依露希爾』は国内のディベロッパーが自主開発したターン制RPG。やはり明らかなサブカル属性を有している。



▲ 『ドラゴンクエスト ダイの大冒険』はTapTapの新作発表会で最も注目された作品。



▲ 『鈴蘭之剣』は国内のディベロッパーが自主開発したシミュレーションRPG。TapTapがパブリッシングを行う。




画像出典:百度図片、国家新闻出版署公式サイト、Nvsgames(朝夕光年)公式サイト
データ出典:国家新聞出版署公式サイト


人気作品振り返り

『航海王:熱血航線』

この作品はByteDance(字節跳動)傘下のNvsgames(朝夕光年)がリリースした3DアクションRPGだ。原作マンガのストーリーを忠実に再現しつつ、経営シミュレーション、自由探索などのモードを導入している。2021年で最初にSNSで話題となり、商業的に成功を収めた作品である。初月の売上は1億元を超えると見られる。


▲『航海王:熱血航線』は4月末にオープンβ版をリリース。



▲3D格闘ゲームモードを採用。



▲原作アニメのストーリーを再現していることがポイントの1つ。



▲イベントミッションとガチャでキャラを集めることがプレイヤーの目的の1つ。



▲カジュアルな経営シミュレーションモードを搭載。



▲広大な海を自由に探索することもこのゲームの楽しみ方の1つ。



『真・三國無双 覇』

この作品は、中国初の『真・三國無双』公認モバイルゲームだ。TencentGames(騰訊遊戯)がリリースし、2021年8月にオープンβ版が公開された。

4か月運営された現在、iOSセールスランキングは40位から60位の間で安定している。主に新キャラのガチャが収入源となっている。課金要素が多いため物議を醸したが、商業的に成功したことは否定できない。



▲『真・三國無双 覇』広告画像。



▲コンソール版の爽快なアクションバトルを再現している。



▲モバイルゲームでありながら、美麗なCGムービーを実装。



▲領地経営モードを搭載。



▲三国時代の歴史を中心としたストーリーステージがこのゲームの主要モード。



▲中国のプレイヤーに好まれているPvPモードを実装。3v3のバトル形式を採用している。



『光与夜之恋』

TencentGames(騰訊遊戯)が自主開発した初の女性ユーザー向けモバイルゲーム。6月末にオープンβ版がリリースされた。初月の売上は2億元近くに上る。ニッチ向けの作品としては大成功である。実績や口コミの面で今年最も成功を収めた乙女スマホゲームだ。

半年運営された現在、セールスランキングは100位~150位にまで低下している。新キャラの実装やガチャイベント実施の際には50位以内に復帰する。

なお、この作品は9月より18歳以下の新規ユーザー登録を全面的に禁止した。中国のゲーム史上初の「18禁」モバイルゲームとなった。

運営側は、この措置は政府の動きに呼応して未成年者により安全な環境を提供するもので、今後のストーリー展開にも役⽴てられるほか、未成年者からの悪意ある返⾦申請などを防ぐこともできるとしている。



▲今作では縦向きの画面を採用している。モードは大きく分けてバトルモードと着せ替えモードの2つ。プレイヤーはキャラを集めてバトルモードに参加し、水晶を攻撃することでスコアを得てステージをクリアする。

着せ替えモードでは、ミッションクリアによって⾐装が獲得できたり、有料の⾐装を購⼊して⼥性主⼈公を着飾らせることなどができる。



『ハリー・ポッター:魔法の覚醒』

NeteaseGames(網易遊戯)からリリースされたこのカード対戦ゲームは、監督部門が突然の依存防止規制を発表した後では初めての人気作品である。

中国で初めて公認を得た「ハリー・ポッター」モバイルゲームであることが、今作の最大の売り文句だ。一般的なカード対戦モードを採用しており、キャラクターが魔法カードを通じて魔法を放つ。魔法カードを組み合わせてデッキを作り、対戦するのがこのゲームの楽しみ方である。

オープンβ版のリリースから間がなく、現在も認知度を高める段階にある。サードパーティーのモニタリング企業の試算によると、このゲームの初月の売り上げは23億元を超える。



▲『ハリー・ポッター:魔法の覚醒』広告画像。



▲メイン画面。



▲カード対戦システムを採用。



▲音楽・ダンスゲームのようなカジュアルモードも搭載されている。



『リーグ・オブ・レジェンド:ワイルドリフト』

有名PCゲームのモバイル版。PC版『リーグ・オブ・レジェンド』は、近年の中国eスポーツ業界の飛躍的な発展の波に乗って大きな人気と影響力を獲得している。そのため、モバイルゲーム版は情報が公開された直後から中国のプレイヤーの期待を集めていた。

10月7日にオープンβ版がリリースされると、初日でiOSの無料アプリランキングと有料アプリランキングに同時にランクインした。初月の売上は11億元超。

この作品は典型的なMOBAゲームだ。10人のプレイヤーが2チームに分かれ、5対5で戦う。相手と激しく戦いつつ、チームの協力とキャラの操作を考えなければならない。

世界同時運営をコンセプトにしており、中国版はリリースが遅れたものの、アップデートを早めて海外版におおむね追いついた。

オープンβ版が成功を収めたことにより、TencentGames(騰訊遊戯)は『アリーナ・オブ・ヴァラー』と『リーグ・オブ・レジェンド』という2作の重量級MOBAモバイルゲームを有することとなった。このジャンルでは、他のメーカーの生き残りは難しくなっている。



▲ 『リーグ・オブ・レジェンド:ワイルドリフト』オープンβ版は国慶節の連休終了後最初の平日にリリースされたため、注目を集めやすかった。



▲ システムはPC版や『アリーナ・オブ・ヴァラー』とほぼ同じだが、モバイル端末の特性に合わせて操作が調整されている。



▲ 『リーグ・オブ・レジェンド:ワイルドリフト』メイン画面。



▲ 『リーグ・オブ・レジェンド:ワイルドリフト』には現在70人以上のキャラクターが収録されている。



《幻塔》

『幻塔』はPerfectWorld(完美世界)傘下の幻塔工作室からリリースされたオープンワールドRPGだ。12月16日にオープンβ版がリリースされた。開発当初から、『原神』に似たグラフィックとシステムで中国のプレイヤーから期待されていた。

最新のUnreal Engineで制作されており、グラフィックが美しい。世界観に必須の「ポストアポカリプス」の雰囲気を高度に演出している。また、キャラクターデザインにアニメーションレンダリングを採用。全体としてサブカル系のゲームが好きなプレイヤーの好みに近づけている。

システム面では、自由度の高さがこのゲームの一貫してアピールしている魅力である。プレイヤーは広い星の上を自由に探索したり、素材を集めて武器を作ったり、捕獲または採取した動植物で体力を維持できる料理を作ったりする。

PerfectWorld(完美世界)が1年で最も注力していた作品である。グループのリソースを結集して制作とPRを行った。オープンβ版のリリース後、iOSのダウンロードランキング1位、セールスランキング7位にランクインした。



▲ 『幻塔』広告画像。



▲ 『幻塔』ストーリー画面。



▲ プレイヤーはよじ登ったり、泳いだり、飛んだりすることで様々な場所に行ける。



▲ キャラの攻撃方法やアクションは持っている武器によって変化する。そのため、武器の獲得がこのゲームの重要な課金ポイントとなっている。




画像出典:「航海王 熱血航線」「真・三國無双 覇」「光与夜之恋」「ハリー・ポッター:魔法の覚醒」「リーグ・オブ・レジェンド:ワイルドリフト」「幻塔」ゲーム画面


2022年注目作の展望



『Honor of Kings: World』

『Honor of Kings: World』は国民的ゲーム『アリーナ・オブ・ヴァラー』から派生した、オンラインでマルチプレイ可能なオープンワールドRPGである。全体的に美しいグラフィックが目を引く。キャラクターのモデリングの細かさやフィールドのエフェクトを見ると、『原神』のように、複数のゲームプラットフォームでリリースされるものと思われる。

現在公開されている動画では、グラフィックが中国のプレイヤーを驚嘆させている。モバイル端末でこのようなハイクオリティーのグラフィックが実現できるかがプレイヤーの関心の的となっている。

『アリーナ・オブ・ヴァラー』の中国での普及度を鑑みると、この派生作品は大いに注目されるだろう。オープンβ版のリリース時期は不明だが、2022年中のリリースが予定されている。


▲ 『Honor of Kings: World』広告画像。



▲ この作品は3DアクションRPGだ。現在公開されているイメージでは、グラフィックが全体的に非常に美麗である。



▲ 飛び散る水しぶきなど、光・影や環境の描写が極めて美しい。



▲ 複数のプラットフォームで展開される。ハードに応じて調整され、マルチプラットフォームのオンラインプレイが実現されるだろう。



《PUBG: NEW STATE》

『PUBG MOBILE』の続編であり、海外の一部地域ではすでに運営が開始されている。中国版も2022年のリリースが見込まれる。

中国の一部プレイヤーはすでに海外のオープンβ版を体験し、高く評価している。ただし、中国でオープンβ版がリリースされる際は、政府の規制に合わせて内容が変化する可能性がある。このタイトルが中国のプレイヤーから期待されている度合いは『Honor of Kings: World』よりも大きい。



▲ 『PUBG: NEW STATE』広告画像。



▲ このゲームは前作同様、対戦と協力に焦点が当てられており、中国のプレイヤーの好みに合っている。



▲ 最新のエンジンを使用しているため、グラフィックが前作よりも大幅にグレードアップ。



▲ SFチックな新武器も登場。これも今作のポイントである。



『Undawn』

今作は、TencentGames(騰訊遊戯)傘下のLightspeed &Quantum Studios Group(光子工作室群)がUnreal Engine4で開発したオープンワールドモバイルゲームだ。シームレスな広いオープンワールドを構築している。

プレイヤーのミッションは、この世界で生き残ること。物資の捜索、リソースの収集、謎解き、チーム協力によるミッションクリアなど、様々なモードが楽しめるほか、経営シミュレーションの要素もある。

今作の大きな特徴は、体型、飢え・渇き、健康、精力などの「生存指標」である。プレイヤーは常に自身の指標を注視し、健康で安全な状態を保つ必要がある。このシステムにより、ゲーム全体の緊張感が高められている。また、豊富な「キャラメイク」システムにより創造力を発揮することもできる。様々なキャライメージを作り上げることで、ゲームの臨場感を高められる。



▲ 『Undawn』広告画像。



▲ 『Undawn』は協力サバイバルがテーマであり、プレイヤー同士の協力に焦点を当てている。



▲ この作品には経営シミュレーションの要素が含まれる。プレイヤーは荒廃した世界で自分の家を作り上げる。



▲ 生存指標システムによりゲームのテーマを際立たせ、ゲーム全体の緊張感を高めた。



『ディアブロ イモータル』

この作品はBlizzard Entertainment(暴雪娯楽)とNetEaseGames(網易遊戯)が共同開発した大型MMOアクションRPG作品だ。ディアブロシリーズの最新作で、従来のディアブロの雰囲気と壮大な世界観を継承しているほか、爽快なバトル体験と探索の楽しさを再現。さらに、モバイル端末に合わせて新しいストーリーとシステムを開発した。

『ディアブロ』シリーズは中国のプレイヤーにとって特別な意味がある。PC版『ディアブロ』シリーズは中国のプレイヤーを啓蒙した作品と言っていい。今回の『ディアブロ イモータル』は初のモバイルタイトルであり、ニュースリリース直後から中国のプレイヤーの期待を集めている。NetEaseGames(網易遊戯)が開発に加わったことにより、中国のプレイヤーが好む新たなシステムが追加されることが見込まれる。

今作は2021年にオープンβ版がリリースされる予定だったが、現在発表されている最新の情報によれば、2022年に延期された。



▲ 『ディアブロ イモータル』広告画像。



▲ シリーズ作品の中心システムであるリアルタイムアクションRPGを受け継いでいる。また、モバイルデバイスの特徴に合わせてソーシャルなMMO要素が強化された。



▲ 美しいキャラスキルアニメーションがゲームの魅力の1つ。



▲ 全体的に暗い雰囲気だが、グラフィックの細かさが見て取れる。



『Lost Light』

このタイトルはNetEaseGames(網易遊戯)が自主開発したシューティングゲームだ。「戦争からの撤退」をリアルにシミュレートしていることがこのゲームの特徴である。

システムは『PUBG MOBILE』と同じである。いずれもバトルロイヤルゲームであり、プレイヤー間の対戦と協力に焦点を当てている。このゲームは同時に、「バトルロイヤル」と「撤退」を掛け合わせており、プレイヤーは戦争後のエリート兵となって戦場を一掃する。戦場から安全に撤退し、物資を持ち帰ることが主な任務である。

数多くのアイテムと装備が登場し、プレイヤーはこれらを改造できる。空腹や痛みのシステムがあり、プレイヤーはキャラクターの生理的状態を注視する必要がある。このような設計により、ゲームに緊張感を与えている。

NetEaseGames(網易遊戯)がリリースした10作目のバトルロイヤルゲームだ。すでに予約が開始されている。



▲ 『Lost Light』公式画像。



▲ このゲームはフィールドの描写が時間や天気に応じて変化する。戦場の環境をリアルに再現している。



▲ このゲームにはコレクション要素として豊富な武器が用意されている。武器の改造も可能。



▲ 現在公開されているメイン画面を見ると、今作のシステムやUIは基本的に従来のFPSのスタイルを踏襲しているようだ。



『エクスアストリス』

この作品は『アークナイツ』のディベロッパー、HYPERGRYPH(鷹角網絡)の第2作だ。

『エクスアストリス』はフィールドやキャラクターがSFチックに描かれている。バトルシステムは半ターン制で、アクションポイントが中核を占める。キャラクターはスキルを使用するたびにアクションポイントを消費する。

従来のターン制ゲームとは異なり、今作はアクション要素が多く含まれる。敵の攻撃時にキャラのアイコンをタップするとダメージを下げることができる。また、敵の攻撃が当たる瞬間に反撃ボタンを押すと、カウンターのような操作を行うことができる。操作に成功するとダメージを受けることなく反撃できる。

公開されている情報では、『エクスアストリス』は、ターン制とリアルタイムの操作を掛け合わせた特徴的なバトルシステムを構築しており、アクションゲームが好きなプレイヤーとターン制ゲームが好きなプレイヤーの両方をターゲットにしている。



▲ 『エクスアストリス』広告画像。



▲ バトルモードは、アクションとターン制が混合した形式を採用。



▲ キャラデザインは『アークナイツ』のようなアニメ・マンガ風スタイルを踏襲。



▲ キャラ育成画面。スキル育成がメインであることがわかる。



『崩壊:スターレイル』

『崩壊:スターレイル』はmiHoYo(米哈遊)の有名ゲームシリーズ『崩壊』の最新作で、3Dターン制戦略RPGだ。今作は崩壊シリーズの世界観と一部キャラクターを引き継いでいる。

崩壊シリーズのビジュアルを踏襲。バトルシステムは非常にクラシックで、4人のキャラクターが交代でスキルを使い、敵と戦う。ターン制は多くのサブカル系モバイルゲームに採用されてきたバトルシステムであり、プレイヤーにとっては受け入れやすい。

ディベロッパーの発表によれば、この作品にはローグライク要素と、膨大なテキスト数のストーリーが用意されている。『崩壊』シリーズはmiHoYo(米哈遊)の持つ『原神』に次ぐブランドだ。これまでのシリーズ作品の評判を受け継ぎつつ、新たなストーリーを展開するというミッションを負っている。


▲ 『崩壊:スターレイル』広告画像。



▲ 『原神』と同様のアニメーションレンダリングを採用している。



▲ 『崩壊:スターレイル』キャラ原画。クオリティーが高く、プレイヤーからも好評。



▲ クラシックなターン制バトルシステムを採用。各キャラに美麗なバトルムービーが用意されている。



《逆光潜入》

この作品は有名な女性向けモバイルゲームディベロッパーPaperGames(畳紙遊戯)の最新作だ。このディベロッパーとしては初の非女性向けモバイルゲームである。

45度の俯瞰視点で2人のキャラクターを操作し、敵の前方の扇形の視界に入らないようにしながら先へと進む。プレイヤーの操作するキャラクターと敵は距離を感知する。戦闘と謎解きを通してステージをクリアすることがプレイヤーの目標。典型的なRTT(リアルタイムタクティクス)ゲームである。

現在、中国のモバイルゲーム市場ではRTTのタイトルは珍しく、新作を開発するには狙い⽬だ。ただ、これまで⼥性向けタイトルを専門に開発してきたPaperGames(畳紙遊戯)が、このジャンルに手を伸ばし、オールラウンド なディベロッパーとして踏み出したのは意外である。



▲ 『逆光潜入』広告画像。



▲ この作品はキャラクターデザインが暗い。女性のみならず全般的なプレイヤーをターゲットとしている。



▲ マップ上の敵の視界から隠れながら、仕掛けを解いて目的地まで進むことを目指す。



▲ マップには多くの謎解きが用意されている。仕掛けのデザインが謎解き要素を強調している。




画像出典:「Honor of Kings: World」「PUBG: NEW STATE」「Undawn」「ディアブロ イモータル」「Lost Light」「エクスアストリス」「崩壊:スターレイル」「逆光潜入」ゲーム画面、公式サイト


2021年中国モバイルゲーム業界トレンドまとめ

1.最新の依存防止規制の実施により、下半期のモバイルゲーム市場に大きな影響が発生
9月1日より施行された最新の依存防止規制はオンラインゲーム企業に対し、金・土・日曜と法定休日の20時から21時までの1時間に限って未成年者にサービスを提供することを求めている。また、実名登録していないユーザーに対しては、いかなる形式によってもゲームサービスを提供できない。

未成年ユーザーはゲームの売上に対する貢献が限られているが、多くのゲームにとってユーザーアクティブ度の維持は重要な一部となっている。未成年者がゲームにアクセスすることができなくなったら、ゲームの生態系に大きな影響が発生する。モバイルゲームメーカーはイベントや有料商品を設計する際に、未成年者の特殊な状況を考慮する必要に迫られる。これまでの運営計画やイベントスケジュールにも乱れが生じる。


2.下半期の版号発行停止によりストックの競争が激化
史上最も厳しい依存防止政策の実施により、ゲーム版号の発行も9月から停止された。現在のところ再開の見込みは不明である。版号の発行停止の影響により、現在の中国モバイルゲーム市場でオープンβ版がリリースされる新作はほとんどが上半期に版号を取得したタイトルである。開発中の新作の多くが版号を取得できずデッドストックとなっている。


3.パブリッシングチャネルの影響力が低下
硬核聯盟を代表とするAndroid向けアプリのサードパーティーストアが優れたゲームに対して影響力を失いつつあることが大きなトレンドとなった。

『原神』がサードパーティーのチャネルを放棄して独自のチャネルでリリースし、大成功を収めたことにより、ゲームディベロッパーとパブリッシングチャネルの強弱関係が逆転し始めた。『原神』は製品に十分な力があれば乱立するサードパーティーチャネルを放棄しても成功を収められることを実証した。

2021年4⽉、『原神』のディベロッパーmiHoYo(⽶哈遊)とXiaomi(⼩⽶)は、 Xiaomiのアプリストアを通じて、 Xiaomiユーザー向けにアプリをリリースすることについて合意した。この際、Xiaomiはレベニューシェアを下げたと⾔われている。この件は、優れたゲームディベロッパーになればチャネルに対して影響力を持ち、売上をさらに伸ばすことができることを証明している。

4.MOBAとバトルロイヤルが依然として中国モバイルゲーム市場の2大トレンドジャンル
今年一年間のiOSセールスランキングの動きを見た限りでは、『アリーナ・オブ・ヴァラー』と『和平精英』の地位を脅かす作品は登場していない。下半期にリリースされた人気作『リーグ・オブ・レジェンド:ワイルドリフト』と『ハリー・ポッター:魔法の覚醒』は、オープンβ版のリリース直後は大成功を収めたものの、勢いが持続しなかった。

中国のプレイヤーは、PvPを好むという特徴が非常に鮮明である。サブカル系のターン制モバイルゲームを代表とする競技性の弱い作品は、キャラデザインやIPの魅力により当初は成功を収められるものの、運営が長期的になるとプレイヤーが大量にリタイアする。


5.市場がニッチな作品を受け入れやすくなりつつある
今年は多数のニッチジャンルの作品が商業的に成功を収めるとともに、大きく注目を集めた。仙人がテーマの放置系RPG『一念逍遥』、低年齢ユーザー向けのカジュアルゲーム『摩爾荘園』、オートチェスゲーム『金鏟鏟之戦』などだ。これらのゲームは、オリジナリティー、独特の雰囲気、そしてIPの魅力により成功を収めた。市場に優れたニッチジャンルの作品を受け入れる余裕があることを証明した。


6.オープンワールドRPGの盛り上がりがなおも持続
『原神』の成功と「メタバース」概念の勃興により、メーカーはオープンワールドRPGの分野に再び焦点を当てている。今年下半期に登場した『神角技巧と11人の破壊者』や『幻塔』はいずれもオープンワールド要素を基本として備えていた。

「メタバース」は次のインターネット時代の標準形式になるだろうと中国のIT業界では考えられている。ゲームメーカーは「メタバース」関連の業務を展開するにあたり、自社のゲーム製品を深掘りすればよく、優位性がある。2022年はオープンワールド要素のあるモバイルゲームが多く市場に出回るだろう。